夢見る港 「やあ、おはよう」全曲解説
2023年6月28日に発売になるポップフリーク要注目のポップバンド、夢見る港の初の流通盤となる3rdアルバム「やあ、おはよう」のメンバーによる曲解説。
【夢見る港】
vo,a-gtr:長坂雅司(noom , (ex)chiki sounds)
key:松野寛広 / birch(roppen,ランタンパレード (support))
banjo,mandolin,cho,engineer:アダチヨウスケ( シンムラテツヤ&SUPER LUCKY BROTHERS , クララズ , 花と路地)
trombone,flute,cho:並木万実(ELEKIBASS (support))
上記4人のメンバーを中心に
support musician
e guiter :青木利文(秘密のミーニーズ,フライダーズ)
bass:木下正樹 (ototogi)
drums:ナカムラハヤト(空中カメラ,Magic, Drums & Love)
3人を加えた7人編成で都内中心に活動中”
今回はメンバーの中心人物、長坂、鍵盤の松野、トロンボーンの並木に語ってもらいました。
左から並木(トロンボーン)、長坂(Vo)、松野(Key)
夢見る港「やあ、おはよう」
1 opening
2 サンダークラップニューマン
3 一滴
4 香りと全て
5 summer in the rain
6 ロージー
7 紅いクチバシ
8 真冬の病
9 loving lalala
10 tears
11 やあ、おはよう
配信リンクコア→https://linkco.re/xDzygRrM
発売日:2023/06/28(水)
価格:2,700yen+Tax
品番:WAKRD-082
POS/JAN:4582217970827
流通:Bridge
01.opening
今回のアルバムはインストから始めたかったので、ストックしてあったデモの中から一番短い曲を選びました。
土埃舞う荒野から鳥が海に向かって飛び立つイメージ。
エンニオ・モリコーネ、フランシス・レイからの影響大。
管のメロディやコード進行など、個人的にはアルバムの中で一番長坂さんらしいなあと思いました。3度目の出航を飾る象徴的な楽曲。
(松野)
3曲ほど候補があったインストのうちの1曲。
モリコーネ大好きな長坂さんらしい曲。
トロンボーンとフルートのユニゾンはメロディーがなかなか覚えられず苦労しました。
(並木)
02.サンダークラップニューマン
久しぶりに訪れた昔住んでいた場所。
記憶の街並みはすっかり変わっていて、自分の居場所はもうここには無い。今の場所に、次の場所に行こう。
ハープシコードの音色、マンドリン、トロンボーン等70年前後のUKフォークをちょっと匂わせたいなと思ったアレンジです。ダンカン・ブラウン、アンドウェラ、ハンブルバムズが出発点。イントロはカレン・ダルトン。タイトルは仮タイトルがそのまま採用されたパターンです。
(長坂)
長坂さんからは最初ハープシコードの音色で弾いて欲しいと言われたので、しばらくはその音色で演奏していましたが、マンドリンの帯域との被りが気になって来て、途中からこっそりクラビネットに変更しました。
The Millenniumが好きな人はおっ!となるフレーズを遊びで入れていますので探してみて下さい。
(松野)
これはあまりライブと雰囲気変わらないかなと思っていたけどミックスでかなり華やかになったなと思います。
今回はヴォーカルがダブルで入ってるのは夢見る港では初。
(並木)
03.一滴
曲のアイディア自体は2010年位にはあったと思います。歌詞が出来たのは2018年頃。
そして2023年にリリース。13年か。。
今のメンバーだから、仕上がった曲だと思います。
やはりトロンボーンとバンジョーは夢見る港の個性と再確認。
何故このアレンジになったのかもう覚えてませんが、ドノヴァン+ラグタイムなイメージだろうな。
(長坂)
鍵盤目線だとピアノの音域を低域〜高域まで広く使った曲で、Bメロでの低域、サビでの中域、アウトロでうたメロと絡む高域と振り分けています。ピアノの語源(ピアノフォルテ)の様にpiano〜forteまでのダイナミズムも楽しんでもらえたらと思います。
(松野)
なぜか2ndアルバムの候補から溢れてしまった曲。
でも、このメンバーになったからこその音になったのではと思います。満を持して感。
特に青木くんのスライドギターがご機嫌で大好き。
(並木)
04.香りと全て
ちょっと都会的な曲を作りたくて、作業しているうちに友達のバンド「ロッペン」っぽいなとか思いながら作ってました。
仮タイトルは「ピーター」。当初はもう少しフォークっぽさを残すつもりでしたが、マッキーフェアリーバンドを聴いていたらプレAOR的な感じハマるかもって事でデモを作り直し現在の方向性に。
歌詞はまっつん(松野)で、長坂が書きそうな歌詞をイメージしたとの事ですが、完全にまっつんの世界ですね。
(長坂)
自分が歌詞を書いたのですが、長坂さんから届いたデモを聴いてアメリカンニューシネマのイメージが膨らんで行きました。主人公はダスティホフマンみたいな少し情けないけど、味のある男。やけっぱちになったその男が、公園で催されているホームレスの飲み会に参加してしまう下りが気に入っています。
マサキング(木下正樹)のグルーヴィなベースも聴きどころ。
(松野)
まっつんからこんな歌詞出てくるんだと。
大人でロマンチックな描写。
マサキングのAメロでベースぶりぶり弾いてるの良いです。
ギターソロの後ろで鳴ってるフルートの音階フレーズは良くあるけどいつかハマるものがあればやりたいと思っていたので、かなり満足。
(並木)
05.summer in the rain
これも古い曲で2012、3年頃ライブで2回くらいやったかも。アレンジが上手くまとまらずフェイドアウトしたのを復活させました。
今回結構デモを作り込んだので完成形は見えやすかったです。
16分のタンバリンに導かれてメローな曲が進んで行く感じは何だか90年代のフリーソウルなムードな気がします。
ブラジルっぽいガットギターが隠し味。
まっつんアレンジのストリングスも聴きどころです。並木はトロンボーン、フルート共に吹いていませんがタンバリンとソロボーカルが聴けます。
それと、洋ちゃんは遂に楽器を弾いていませんが、ミックスで演奏しています。
という訳で新しいバンドの在り方が垣間見れる一曲かなと。
(長坂)
この曲では鍵盤の他に弦アレンジを担当。自分としては、最初この曲に弦を入れるイメージは無かったのですが、入れてみたら中々良い感じに仕上がりました。(奏者は自分のソロbirchでもお世話になった横山千晶さん。)
基本はバイオリン2本で進行して、アウトロでは4本。ブラジルっぽいガットギターが入っているのもあり、少しどろっとした要素を入れたくて、部分的に2度のハーモニーを使用して変化を付けています。
長坂さんの歌詞の中ではこの曲が一番好きかも。軽やかで。
(松野)
出ました!並木のタンバリン!
無感情で16分を振り続けました。
そして、これこそ寝かしておいて良かった曲。
ストリングス入ってオシャレになった!
(並木)
06.ロージー
まっつんと最初の共作曲。
夢見る港は今まで基本的に長坂が作詞作曲をしていたのですが(1曲北山さんとの共作あり)
まあ、曲は書けても中々歌詞が書けなかったんですね。
そんな折に、まっつんに依頼したのが共作シリーズのきっかけです。
自分だけでは生み出せない新しい世界が広がり、上手くいったと思います。
可愛いブリティッシュフォーキーポップ曲で
2番の最初のボーカルは洋ちゃんが歌ってます。
良い味出してます。
仕上がりとしては後期ゴーキーズザイゴティックマンキを意識してます。
(長坂)
この曲の作詞も自分が担当。愛らしい曲調だったのでその中に切なさも入れたくなり、山田詠美「風葬の教室」の主人公の様なクラスで浮いてしまっている大人びた少女が思い浮かびました。落ちサビの部分で、初夏の草木の匂いと、周りの子供たちの匂いを掛けて、それらを軽蔑する描写が気に入っています。しかし俯瞰で見ると軽蔑している彼女も実際には子供で、本当は周りに理解して欲しいという背反する感情を表現しようと思いました。長坂さんとの共作曲の中では一番気に入っている作品です。
(松野)
これぞbirch松野の世界観。
最初の最初、本当は2回しで終わる曲だったけど、まっつんか歌詞書いて返ってきたらサビが増えてて半音上がって返ってきた。
これが共作の醍醐味!と感じました。
(並木)
07.紅いクチバシ
これもまっつんが作詞。
マッギネス・フリント+パワーポップなイメージで作ったけど、ちょっと風変わりなフォークロックで着地しました。
歌詞も面白いし、リズム隊も躍動してるし、青木君のギターと洋ちゃんのマンドリン のユニゾンも癖になります。
みんなの歌で使われたら良いな。
(長坂)
ロージーに続きこちらも自分の作詞。デモを初めて聴いた時にこれは鳥の曲だ!と思い浮かび書いて行きました。テーマは進化論。自分が子供の頃は恐竜から鳥に進化したという学説はまだ異端だった気がしますが、最近だとこの説は割と一般的だそうです。
(松野)
出来上がってみたら、すごいコミカルになった。
やればやるほど楽しくなったので、トロンボーンたくさん吹いてしまったけど、ミックスでうまく処理してもらって「洋ちゃん(アダチヨウスケ)、さすがやわ、ありがとうー」と思いました。
(並木)
08.真冬の病
アルバムの中では1番新しい曲。
コロナ禍の気持ちをそのまま書いた、自分にしてはストレートな歌詞です。
静かに始まりますが最終的にはエモい。
最後青木くんのギターが火を噴きます。
聴く人によって色々な解釈があって良いと思いますが、個人的にはアメリカンフットボール+ニールヤングな曲。
(長坂)
自分はオルガンを弾いているのですが、青木くんのギターとの兼ね合いを一番意識した曲。彼とこの件について特に話し合ったことはありませんが、演奏中にオブリなどで気を使ってもらってるなあという部分があったので、自分もなるべくギターを立てる演奏をしました。ノイズからシーケンス的なサビのフレーズまでギターの幅広いプレイを是非聴いてみて下さい。
(松野)
フィードバック!
宅録したと思えない青木くんのフィードバック!
2番のハヤトくん(中村ハヤト)の16分!静かに淡々とした16分!(好物)
(並木)
09.loving lalala
曲が出来た時、穏やかで愛に溢れたイメージのメロディーだと思いました。
歌詞は自分でも何度かトライしましたが、全部イマイチ。。そんな折、並木からTHE FOWLS のさっちゃん(安延沙希子)に依頼したらどうかと提案され、これはハマりそうだと思い歌詞を依頼しました。
そして、見事に想像以上のフィットする歌詞を書き上げてくれました。
それに加えて、さっちゃんの弾き語りデモが素晴らしかったので、この歌も入れたいと思いデュエットする事に。
アレンジも含めイメージを具現化出来て満足しています。
簡単に言うとハイラマズ+メロウソウルな感じですかね。
マサキングのフレットレスベースも歌ってます。
(長坂)
さっちゃんの歌詞がとても素晴らしくて、このアルバムの中で一番好きな詞です。彼女の詞は人々の生活やその匂いがすぐ目の前にある様に感じられて自分には書けないもの。
鍵盤としては、長坂さんの依頼で唯一シンセを入れた曲でフィルターをいじりながら演奏しています。
Dr:ハヤトくんのリンゴみたいな跳ねたフィルも素敵です。
(松野)
さっちゃんがすごく素敵な歌詞を書いてくれて、弾き語りで返してくれたのを聴いた時に、もうこれ港でやらなくてもいいんじゃない?
さっちゃんにやってもらったほうがいいんじゃない?と思ってしまうほどだった。
そうもいかないのでそれ以上に素敵になるようにアレンジしました。
(並木)
10.tears
僕はアルバムにシャッフル曲は不可欠と思い込んでいる節があります。これもデモを作り込んだ曲なので、全体的な仕上がりは早かったと思います。
イントロのスチールギター、トロンボーン、ピアノのバッキングのコンビネーションは上手くいったかな。
こう言うポップソングにスチールギターとかバンジョー入るの好きなんですよね。
完全にハーパスビザールとかのバーバンク系の影響です。
(長坂)
最初この曲に対して地味な印象があったんですが、実際に録音してみるとアルバムの後半でカタルシスを感じさせる役割を担っている曲だと思い改めました。軽視してすいませんでした。
(松野)
トロンボーンとスチールギターのグリッサンドの掛け合いから始まって、
サビではシャッフルの刻みと心地よく絡んでく感じ。
グリッサンドの着地のピッチはすごく気を使うし、ライブの時ももちろん気を抜けないんだけど、そこが凄くたのしい。
アルバムの中でこの曲が1番好きかもしれない。
(並木)
11.やあ、おはよう
アクセントとして、弾き語り曲があっても良いかなと思い作った曲。
ロンセク・スミスの弾き語りが頭にあったかも。
閉塞感の中で心が鈍く、無関心になっている事への危機感。そこから抜け出す希望を歌った曲です。
まっつんのストリングスアレンジもばっちりハマって良い曲に仕上がりました。
(長坂)
アルバム1曲目と同様に自分の中で長坂さんらしさをとても感じる作品。
自分がアレンジを担当した弦楽三重奏はとても英国的なものに仕上がって気に入っています。(こちらもbirchでお世話になったVn:横山千晶さん、Vc:成澤美陽さんに参加して頂きました。)
部屋鳴りを録るためのアンビ用には自分のマイクを使用したのですが、良い仕事をしてくれました。
(松野)
長坂以外バンドメンバーは演奏していなくて弾き語りとゲストミュージシャンのストリングスのみ。
弾き語りだけでも十分素晴らしいけど、ストリングスが入ることでより世界観に入りやすくなっているかと。
一部、私の歌詞が採用されたのがちょっと嬉しい。(長坂さんは多分覚えてない)
(並木)
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