第2回 ニッチ・ポップ試聴会 前編

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ビートルズ不在の70年代の「隙間」を支えたもうひとつのポップ・シーン「ニッチ・ポップ」、その「隙間(ニッチ)」をこの日本、東京で見つめるバンドが2016年に鳴らすのは一体どんな「隙間(ニッチ)」音楽!?

というテーマで、お送りしている“WaikikiRecord presents 「ニッチポップサンデー」”

第2回目の今回はELEKIBASSと、空中カメラ、につづき、The Pen Friend Clubからリーダーの平川 雄一さんと、シンガーソングライターであり、音楽プロデューサーでもあり文筆業もこなす渚十吾さんを迎えて総勢7名で「ニッチ・ポップ」をテーマに音楽視聴会を開催してみました。

テーマその1「BEACH BOYS – 渚十吾×平川雄一」img_0664img_0679

 

 

 

 

 

左:渚十吾 右:平川雄一(The Pen Friend Club)

時々:サカモト&JP(ELEKIBASS)/田中(空中カメラ)/中村(空中カメラ)/寒川(空中カメラ)

*対談を文字起こししての記事掲載になりまして、発音表記、年代に誤りがある場合ご連絡いただければ訂正しますので、info@waikikirecord.comまでご連絡いただければと思います。

 

:78年ぐらい。あのー、日本来たでしょ。JAPANJAM。その時僕担当だったの、レコード会社の。

平川:あの時、レコード会社は?

:SONY。その時はまだSONYのレコード会社にいて、その時の担当者なの。

平川:じゃあ、Beach Boysを呼んだわけですね。

:いわゆるイベンターみたいなみたいなのをやって、僕はレコード会社の制作・ディレクターだったの。(その時は)デニス・ウィルソン(Dennis Carl Wilson)は来なかったけど、(裏で)ずっと一緒だったの。

その前に、雑誌の取材でロサンゼルスのアンフィシアターって所で…1週間位ライブしたのかな。その時はデニス・ウィルソンが居たんだけど。まだ(ライブを)やってた。

その前にブルース・ジョンストン(Bruce Arthur Johnston)の家とかそれこそジャケットをやってるみたいに、キャプテンフェニングの家とかみんなで行きましたね。

平川:へえ。最近は、交流とかは?

:(家に)行ってからしばらくはブルース・ジョンストンからTシャツとか送ってきてたけど。名前入りのね。結構あの当時は、何年かブルース・ジョンストンが(皆を)まとめてたって言うか。それがまさにリアルタイムだったの。

平川:いいですね。もう、まさに「担当」なんですね。

:そう。みなさん見てると今また(活動してるから)すごいなって思うんだけど。僕らが担当してたのが30年以上も前だからね。

平川:60年代もリアルタイムで聞いていたんですか?

:もちろん聞いてたよ。初めて買ったのがね、多分…ビーチボーイズは「TODAY」かな。

平川:ああ、1番良いとこですもんね。

:でシングルは多分もっと前に買ってると思うんだけども、「Help me Rhonda」辺りの。65、6年かな…。

平川:そうですね。65年。

:だからもうビーチボーイズの事は…訳わかんなくなっちゃったけど(笑)

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平川:ニッチポップと言う事ですが。そもそも、ニッチとは?と言う所ですよね。

サカモト:そこにね、そこに最初は当たりますよね。

平川:そもそも、ビーチボーイズがニッチなのかどうか。ビーチボーイズの中でもニッチなのを、選んで頂いたらどうなるのかなと。

:あの、企画お誘いメールを見たんだけど、ビーチボーイズにまつわるってあったから、別にビーチボーイズだけではなくても良いよね?

平川:あ、そうなんですね。

:だから、ビーチボーイズも凄いけど…。やっぱり60年代の中期くらいの人間にとっては、Beatles・Beach Boys・Rolling Stonesっていう。全然タイプが違うように見えるけど、見えるんだけどあの当時は同じだったんだよ。

平川:並びがね。

:もっと言えば、それこそ映画音楽とかイタリアのカンツォーネとか所謂普通のそういうヒットポップって言うのも、今みたいに色んな音楽があって『同じ』って言う事じゃなくて、当時は同じ物だったんだよ。

平川:そうですよね。あちら(Beach Boys以外)から、やってみた方が良いですかね?

:そうかもしれない。…当時はそういう物(ロックとかのジャンル)がまだ無かったから。

それが今では年齢が…みんな70歳以上になってて、昔の僕らが聞き始めた頃のブルースマンみたいな感じ(存在)だよね。聞き始めた頃の、ストーンズとかビーチボーイズとかの影響を受けた人達っていう。黒人とか…ある1つのアメリカのスタンダード(な存在)…だからそれが今、多分みなさんにとっては彼ら(ビーチボーイズ)になってるんだよね。

平川:この当時は、ビートルズもビーチボーイズもストーンズも、一緒に聞いていたんですか?派閥、みたいな物は?

:一緒に聞いていたけど…派閥も若干あるんだけども、そんな今みたいにはないよね。ロックとかポップスみたいな事が。ロック自体のロックンロールって言う黒人音楽があったけども、所謂(現代の)ロックって言うのはもうちょっと後になってくるからね。ジャンルが無かったもんね。

平川:なるほど。ジャンルとしてのロックがね。

:言い換えれば、ロックって言うか…。でもそれはほら、どんな音楽でも言えるような気がするんだけども。いわゆるその音楽のスタイルで、ヘビーにやってるからそうだ、って言うんじゃなくて。すごいポップスをやってても、ロック。多分この方たち(対談メンバー)はみんな、こんな事で集まってるんだから(笑)、相当なそういうことじゃないの?(笑)

そういうことってのは、その当時、60年代の中頃位からのものすごくコーラスでバッてやってて、ポップサウンズって感じ、って言うのがまさにそうだよね。

 

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平川:気になるところですよ、コレ。渚さんが何を持ってきたか。

:チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)の「Big Sur Tapestry(1979年)」。…見ても、何がビーチボーイズか分からないかも分からない。ずーっと見てて見て。聞いてもこれ、訳わかんないよ(笑)。

平川:クレジットに、何かあるんですか?

:そうそう(笑)。

平川:「ブライアンウィルソンズホームスタジオ」。

:ね。それA面でしょ? で、もう1個は?全部読んで、ゆっくり。

平川:…あ、「マイケル・エドワード・ラブ(Michael Edward Love/マイク・ラブ)」。マイク・ラブ。

:うん。それもいるしー…。その前に「ブライアンウィルソンズホームスタジオ」ってあったでしょ、それがサイド2で。サイド1も見て。

(しばしクレジットを見つつ、曲を聞く)

:どこがビーチボーイズだよって(笑)This is ビーチボーイズ。…訳分からないでしょ?(笑)

平川:…あ!ブラザーズスタジオ。なるほど。

:違う違う。まだこの、A面はブラザーズスタジオ。これはサンタモニカにあったらしいんだけども。B面が…。

平川:グラニマスホームスタジオ。…で録られたってコレかあ。

 

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:一時期ビーチボーイズのバックやってた事があるんだけども、結構有名なプレイヤーなんだけど。何でこれがすごいビーチボーイズなのかって言うと、Big Surって場所がカリフォルニアにあるのね。そこは、アル・ジャーディン(Alan Charles Jardine)なんかがレディ・リンダと一緒に住んでたんだけど。

平川:ビーチーボーイズの歴史の中で、良く出てきますよね。

:出てくるでしょ。でそこの…西海岸行った事ありますか?

平川:ないんですよ。行きたいんですけどね…。

:行かないとね、ビーチボーイズがいかにああゆう風になって行ったかって言うのは分からないかもしれない。

平川:なるほど。現地に行かないと。

:なぜならば。

もうずっと温暖で昼間はTシャツで良いし、でも夜になったらジャケット着込まないと寒くてやってられない。

で、そういう所でずーっと穏やかなのほほんとした所で、ああいう風にヒット飛ばしたでしょ?であんな風に人気になって、僕が行った家もプール付きのすごい所だったんだけども。…キャプテン&テニール(Captain & Tennille)の家なんてすごかったよ?大豪邸だった。訳分からないような家になってたの。

そこで豪勢に暮らしてたでしょ。そしたらたまたまだったけど行くよね、こういう風に。こういう風に話題になったりとか。…ああいう風に人気になって行くの、分かるよね。あれはロサンゼルスに行かないと分からない。

それでこのBig Surって言う所は、すごい断崖絶壁の…西海岸の太平洋の、ロサンゼルスとサンフランシスコの間位の所なんだけど。昔のハリウッド映画に出てくるような断崖絶壁の所で、ドライブしながら何か落ちそうになったりとかするヒッチコック(Alfred Joseph Hitchcock)の映画のような雰囲気の、もう本当にそういう所なのよ。だから、ロスって言うと華やかなイメージがある感じだけども、ちょっと離れたらもう本当の山奥になる。そう言う土地なんだけども。

で、これはそこの組曲で、だからちょっとどっちかって言うと瞑想的になってる。で、ほとんどインプロヴィなんだよ。これはハープとフルートと一緒にやってる、この人はサックス奏者だけども。

平川:この人は、ブライアン(ブライアン・ウィルソン)とかマイク(マイク・ラブ)とかと関係があったんですか?

:バックやってた、一時期。多分70年代の…後半位にやってたね。

平川:なるほど。そう言う繋がりで作ったと。

:それでまたこれとすごいイメージがダブるのが、10年前かもっと前か分からないけど、キャロル・キング(Carole King)の伝記映画みたいなのがやってたの。実際にはちょっと脚色してあって正確な伝記ではないんだけど。

ーーキャロルキングがソングライター業が嫌になって東海岸のブリル・ビルディングから西海岸に行くのね。何で西海岸に行くのかって言ったら、実際にはそうじゃないんだけど1人すごいミュージシャンがいる設定で、それがブライアン・ウィルソン(Brian Douglas Wilson)で。(キャロルキングが)東海岸の生活が嫌になって、ビデオか何かで見たブライアン・ウィルソンに憧れて西海岸に行って、ブライアンウィルソンズスタジオかブラザーズスタジオか、そこで2人で一緒に曲作りを始めるって言う話になってる訳。

平川:それ、映画用のウソの話ですよね?(笑)

:ウソの話(笑)。それで、その時東海岸ではフィル・スペクター(Harvey Phillip Spector)とか出てくるの。本当のバリー・マン(Barry Mann)って言ういかにもな雰囲気で。実際、バリー・マンとかはキャロル・キングと仲良かったんだけどね。で、西海岸で曲を作る事になった時…最初は結婚して普通だったんだけど、ブライアン・ウィルソンが頭がおかしくなる設定になってる訳(精神的衰弱)。そのブライアン・ウィルソンが瞑想する為(ドラッグによる酩酊状態で、戸外に出た時)に、海岸を散歩するシーンがあって。そのシーンが通常のビーチボーイズのイメージとは違うんだけど、僕はダブって来て。…まあ、ニッチだなあと(笑)。

…じゃパッパッと話していこうか。

(持参した作品のジャケットを見ながら)

 

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このおっちゃんのこれは(今日の)2枚目じゃないんだけど、これにはパメラ・ポーランド(Pamela Polland)とかね、色んな人たちが入ってて。

(2枚目のクレジットを見ながら)

平川:マイケル・ラブ、カール・ウイルソン、アル・ジャーディン。

サカモト:じゃちょっとそっちに(音源を)切り替えてみましょうか?

平川:これコーラスで参加してるって事ですか?

:そう。あと、パメラ・ポーランドとね。

平川:ロジャー・マッギン(James Roger McGuinn)も参加してる。

:そうそう。(流れてきた曲を聞いて)これ、A面の曲。…瞑想の曲(笑)。

田中:全く意外ですもんね(笑)。

:全く関係ない雰囲気だよね(笑)。でも30年も聞いてるともう、どうでも良くなるよ(笑)。でもこのアルバムね、めちゃくちゃ良い作品なんだよ。実はすごいんだよ。

田中:それは、B面が少しテイストが変わるとかですか?

:A面はハープと2人でインプロヴィなんだけども、B面は1人でやってる。フルートを延々吹いてるの。それがすごい良いの。

 

平川:マイク・ラブ、カール・ウィルソン、アル・ジャーディン、ビリー・ヒンチもいますね。

:入ってるね。ビリー・ヒンチも、ブラザーズスタジオで録音してるよ。

(しばし音源を聞く)

平川:何か瞑想とか、TM(トランセンデンタル・メディテーション/超越瞑想)とかですよね。マイク・ラブがやってましたよね。

:リードボーカルが出てくるけど、(それが)パメラ・ポーランド。…パメラ・ポーランドって、テリー・メルチャーの彼女だったんだけども。ライ・クーダーと一緒に「ジェントル・ソウル」っていうグループをやってた。(その人が)サンフランシスコにいたんだけども、ボーカルで出てくる。

平川:テリー・メルチャーの、彼女。

:そう、昔ね。

平川:これ(この曲)は初めて聞きましたね。

田中:こっちはよりビーチボーイズですね。

:コーラスはね。これでも、2枚目じゃないんだよ。僕2枚目に持ってきたのは…はい、これ。

 

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平川:「Holland(The Beach Boys/1973年)」。

:うん。これのね…3曲目。で、3曲目の歌詞を、見よ!

(曲をかける準備をしつつ、歌詞を見る)

:…じゃあ、聞いてみます?3・4・5(曲目)と、”California Saga”。

(曲を聞く)

平川:組曲調だったんですよね。

:そう。Big Surに鷲・イーグルが飛んで…。でこの、マイク・ラブの脳天気なバカらしい曲が始まるんです(笑)。それが良いんだよ。

(しばし曲を聞く)

:僕がメンバーで1番好きなのはブライアン・ウィルソン。その次に、デニス・ウィルソン。その次に、カール・ウィルソン(Carl Dean Wilson)。その次は…いなかったの。でも何年か後に変わって、1番好きなのがデニス・ウィルソン。その次に、ブライアン・ウィルソン。その次に、カール・ウィルソンになったの。で段々最近は、アル・ジャーディン、マイク・ラブ…で(今まで言ってた人が)いなくなっちゃったの(笑)。

平川:ブルース(Bruce Arthur Johnston)は全然好きじゃないですか(笑)?

:いやいや、そんな事はない(笑)。

平川:なるほど(笑)。…この、5曲目の”California Saga: California”って言うのは、最近でもよくアル・ジャーディンがボーカルでライブもやってますよね。

 

 

:これ誰も聞いてないだろ、ここら辺は(笑)。

平川:「Holland」は、ビーチボーイズが本当に好きな人じゃないと、ね。

:ね(笑)。いやでもこれは面白いよ。何で面白いかって言うと、この時にマネージャーになってたおっさんが騙くらかして、オランダで録音しようって言って機材とか全部運んで、8ヶ月くらい向こうに住んで。ブライアン・ウィルソンも(当時)頭おかしかったんだよ?でも、何とか向こうのテレビで面白い番組やってるからって言って、昔やってたアメリカの番組やってるからって言って誤魔化したりとかして。で、だから今もオランダで作ってるの。

平川:何かこれに、EP版がおまけで付いてきて、EP版はブライアン・ウィルソンの…

:語りね。童話みたいなやつ。

平川:そう。童話を物語るんですよ。不思議な1枚。でも1曲目の”Sail On, Sailor”とか、結構良い曲だし。

 

:あのね、(これは1度)レコード会社に拒否されて出せないと。で、何とか頑張って曲を入れ込んで・作り・探し出し…。

平川:元々”Sail On, Sailor”が無かったんですよ。だから、それ以外の曲はブライアン・ウィルソン以外のメンバーが作曲してて、『全然良い曲、無いやん』て形になって、じゃあもうブライアンが作曲したやつを入れよう、と。

:だからヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)とかレイ・ケネディ(Raymond Louis Kennedy)っていう、結構AORのおっちゃんとか入ってて一緒にやってるの。でも、元はあったみたい。

 

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:「South Monterey」って(歌詞で)言ってるでしょ?それはBig Surの上の方なの。ちなみにそこまでドライブで1人で行った事あるんだけどね。で、その辺の地形の事歌ってるの。…「モントレー湾」とか。

平川:この時期は本当に、どん底でしたよね。

:ね。うーん…。だから僕らの年代はリアルタイムで聞いてて、もうこの頃聞かなくなったもん。みんながまた評価したのはこれよりもうちょっと前だけども。

それで思い出したのは、実際にJAPANJAMでビーチボーイズが来た時、もし僕がこれ(「Holland」)を面白いと思ってたらもっと話を聞いてただろうけど。それ程興味が無かったからね、その時は。

…じゃ、次行きますか。持ってこられたのを。

 

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平川:僕はですね…。渚さんと同じような観点ですが、ビーチボーイズの中でもニッチなやつを持ってこようと思いまして。

…これはですね、アメリカのナスカって言う所のガソリンスタンドで売られてたCDなんですよ。で、その為にレコーディングされて。でも参加してるのは、マイク・ラブとブルース・ジョンストンと…となってます。で、プロデューサーがエイドリアン・ベイカー(Adrian Baker)。今はやってないんですけど、高音を担当していた(方です)。

で、僕の好きなのは、6曲目の”Little GTO”でして。これはあの、ロニー&ザ・デイトナス(Ronny & The Daytonas)のシングルですね。それを、ビーチボーイズがカバーしてると。

(しばし曲を聞く)

平川:ま、それだけなんですけど(笑)。

サカモト:でもそう言う所で売られただけあって、キャッチー具合は…(笑)!

平川:そうですね。他の(曲)もガソリンスタンドなんで、全部ホットロッド(Hot rod)の曲なんですよね。ホットロッドって言うと…改造車ですね。車の曲ばっかり集めたやつの中に、ロニー&ザ・デイトナスの”Little GTO”がある。「GTOをぶっとばせ」と言う邦題が付いている。だから、ビーチボーイズ名義でロニー&ザ・デイトナスの曲をカバーしたのは、これだけ。そこが良いって言うのと…オリジナルより、こっちの方が好きっていう(笑)。音そのものはね、ショボいんですけどね(笑)。

サカモト:これ、普通にもちろん、日本じゃ手に入らない物なんですか?

平川:これね、日本で買いました。ユニオン(disk union)とかにありました。多分持ってる人は持ってるみたいです。これ…98年?ですね。

サカモト:これは、98年って考えると…もう全く、営業でレコーディングしたんですかね?

平川:絶対そうですね!

サカモト:とりあえずギャラで、みたいな(笑)。

平川:絶対そうでしょうね(笑)。

サカモト:そう言う感じが何か、逆に迷い無くて聞きやすい気がしますね。

平川:そうですね、うんうん。…何か、何も考えずに聞けるんで良いですね。

ビーチボーイズって歳とってもしっかりレコーディングする所が、良いなと思いますね。

(曲が終わる)

:…続いて行ってみましょうか?

平川:行ってみましょうか。そっか…どうしよっかな…!

(曲が流れる)

サカモト:この曲は、録り直してるんですか?

平川:全部録り直しですね。だからわりと、貴重っちゃ貴重ですね。

サカモト:そうですね、ちょっと面白い。

平川:セルフカバーじゃないですけど、そんな形なんですよね。

ジャン&ディーン(Jan and Dean)のバックとかやってましたよね。

:へえ、何(の曲)?

平川:”パサディナのおばあちゃん(The Little Old Lady from Pasadena)”。

平川:(思わず、一緒に曲を口ずさむ)

サカモト:何ですか、そのシンクロ具合(笑)。

平川:(笑)。ね、通じ合ってるんで。

:その曲はね、すごい良い。

田中:あ、これ入ってる?

平川:これ、3曲目です。

:これはちょっと聞いてみたい。

平川:”パサディナのおばあちゃん”、98年バージョン。

:ま、もちろん僕らが聞き始めた頃はこれがビーチボーイズだったの。

田中:いわゆる初期の頃?

:うん、1964年位ね。

平川:元々、ジャン&ディーンのシングルですよね。

:この曲はね。…もちろん、シングル盤買いましたよ、当時(1964年位)ね。

で恐ろしい事に、うちの家ではつい2週間くらい前にこの曲が話題をさらったの。下北のオオゼキで、この曲かかるんですよ。多分、そこに買い物に来てる人が年配の人だから。

平川:おばあちゃんとかいるから。

:それで、オールディーズとかよくかけてるの。何かのチャンネルで。丁度この曲がかかって、その事を家で話したばっかりなの。

田中:最近ドトールでソフトロックかかったりとか、結構ありますよね。何かのチャンネルなのか。

平川:確かにありますね〜…じゃ次行きますか。

…これ、ご存知でしょうか?

 

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:や、知らない。

平川:これがですね、70年代にレコーディングされた物なんですけどね。近年(90年代・00年代以降)に改めてCDとなったと。その時にある一部で有名に、『お、CD化されたか。』となったんですけど。内容が全部ね、子供が演奏してるんですよ。

(全員が「へえー。」)

平川:じゃあ、2曲目の”Good Vibrations”を。

中村:”Good Vibrations”子供が演奏してるんだ?

田中:歌うんじゃなくて、子供が演奏してる。

平川:はい、そうなんですよ。他にもポールの曲とかね。あと…”スペースオディキン”とかね。選曲がすごいんですよ。これは小学校の先生がそういう音楽マニアで、子供達に楽器を持たせて歌も歌わせて。

(曲を聞きながら)

:あ、すごいこれ。これ好き。

平川:これ良いですよ。…これね、フランク・ザッパ(Frank Vincent Zappa)が大絶賛してる(笑)。

(一同笑)

平川:…キーが低いなあ。変えれば良い。

ま、その至らない感じとかも良い。子供が低すぎて歌えない感じとかね。

田中:ああー(笑)

平川:で、”Good Vibrations”の他にビーチボーイズで言うと、19曲目の”Little Deuce Coupe”。

(しばし聞き入る。)

平川:…とかね。あと10曲目のね、”I Get Around”。…このグルーヴの、無さ!

サカモト:そうですよね。で、録音状態もすごい悪くて(笑)。逆に面白い。

:何年ぐらいのやつなの?

平川:これはね、…70年代中盤?とかでしょうね。

:あ、そんな前なの。

平川:ま、でもね。こう言う子供達の至らない演奏と歌なんですけど。何かそう言う所が良い!と。しかもブライアン・ウィルソンの作品の時も、本当に無垢な人達が奏でているという試み(が良い)。

…もう1曲良いですか?あとね、至らない曲ばっかりじゃないんですよ。1曲すごく良いのがあって、13曲目のイーグルス(Eagles)の”Desperado”。これがね、なかなか良いんで。

:これは面白い。

平川:これは良いですよ。…ビーチボーイズ関係無いですけど。

(曲を聞く)

田中:これは、独唱ですか?

平川:独唱です。

:良いね。

平川:ま、こう言うのも入ってる…聞けるやつも入ってると。

サカモト:全然小学生のと違う…(笑)。

田中:これはでも流通に乗ったんですか?

平川:これはですね…(何か資料を読みながら)「生徒たちからお金を集めて、演奏者・両親・クラスメイトと教職員用におよそ300枚のレコードをプレスした。」

(一同「へえー。」)

平川:だから本当に知り合い向けに作っただけだけど、誰かが見つけて『何かこれ、すごいぞ』って言う噂が広まって…フランクザッパの目に止まると言う(笑)。珍盤ですね。

 

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:ちなみに、みんなすごいよね。ビーチボーイズについてすごい(色々な活動を)やってるじゃない?すごいなと思って。みんなすごいよ、素晴らしい!

サカモト:こう言っちゃなんですけど、「そう言うの」が楽しいじゃないですか、音楽って。

:だから(それを)やり続けてるからすごいなと思って。

サカモト:何か(そう言う活動自体が)少しずつ減ってきてる気がするので。

:確かに、そうも思ったんだけど。でもすごいなと思って。

サカモト:でも、昔はそういう(活動をする)人が周りにもっといたんですけどね。何か、『マニアで当然』みたいな瞬間(世代)があって。でも逆に『音楽知ってるのがダサい』みたいなそんな空気(世代)が1回あって。で、その下の世代でちょっとオタクが出てきたな、みたいな…。

:ちょっとやっぱり(このメンバー内でも)違うの?

サカモト:何歳?

田中:23(歳)です。

平川:36(歳)。

サカモト:ま、(ここは)近いですね。僕40(歳)なんで。

こうやって(世代が)一周してる。…また聞き方が面白いんですよ。

:何か、みんな(対談メンバー)の方でやるテーマ(後半のテーマ)は「パイロット(Pilot)」か何かでしょ。知ってるの?

サカモト:ま、知ってるは知ってるよね?

田中中村寒川:はい。

:3人で共通してるとして、どういうのが好きなんですか?

寒川:難しい…!

:バラバラ?

中村:何か、滅茶苦茶に聞いてる感じです。60年代の事は抑えてるけど、(ルーツとして)入ってるのは渋谷系とか。で、何で俺たちの世代が渋谷系なのかとか、そこにも違いがあったりして…。

:あ、もう渋谷系は(君たちにとっては)前の話(世代)なんだ。

田中:はい。渋谷系は(俺たちにとっては)昔の話(世代)なんですけど、YouTubeで入って来る感じだったり。…結構滅茶苦茶に聞いてる。

:例えば、何かパッと挙げるとしたら?全部違う基準で良いから。

田中・中村・寒河:んー…(笑)。難しいなあ…!

サカモト:そこで(やっぱり)迷うよね!そう言う所あるよね(笑)!

平川:この間の対談の時、何持ってきたっけ?

田中:ミレニウム(The Millennium)とか…。それと たま と、L⇄Rですね。あと、ゾンビーズ(The Zombies)とか…。

サカモト:ちょっと面白いのが、僕らより更にインターネットで全部(情報が)分かる世代なので、順応性がものすごい。『その次にこれ聞くんだ』みたいなのがあって…。

:でも、僕なんかももう、巡り巡ってぐちゃぐちゃだよ。年代もぐちゃぐちゃだし。1950年代くらいの「アルビオラ」とかレコードで聞いて、かと思えば2003年くらいの最近のインディーバンドみたいなの聞いてたりとか。だから、(若い世代と)同じだよ。

サカモト:2周して同じとこ来てますね(笑)。

平川:随分周りましたね(笑)。

 

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(このパートの1枚目のジャケットを見ながら)

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中村:これ、ジャケットめちゃめちゃ良いですね(笑)。

平川:良いでしょー?合成ですからねこれ(笑)。

(一同爆笑)

サカモト:確かにサービスエリアに売ってるっていう感覚で行くと、すごい分かる…分かりやすいよね。

平川:これ売ってたら買っちゃわない?

中村:こういうの、いーっぱいあったんだよね。

平川:スターバックスでもね、ビーチボーイズのCDが出たんですよ。それはね、結構おしゃれな感じで。選曲も結構良い感じで。

 

 

サカモト:じゃあ、もう1曲紹介して頂いて。

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:これは別にね、出なかった(リリースされなかった)やつだよね。Land Lockesで。これの1曲目。

平川:これはね、正規で出ましたよ。

:あ、この感じのジャケットがね。

平川:”Loop De Loop”ね。これは、未発表になったんですよね。

:そうですよね。…で、この中にさっきの”Big Sur”のリズム(テンポ)が違うやつが入ってるんだけども、間違えて「Big Sue」になってるの。「Big Sue」だと違う曲を想像するでしょ?でも、あの”Big Sur”なの。これをELEKIBASSにカバーしてもらおうと思ってる(笑)。

平川:でも僕、このバージョン初めて聞きました。

:本当に?これこの頃にも録音してたんだよね。だから何もない。

サカモト:元々、何もないんですか?

平川:この曲は、この(作品)の中に入ってる。で、(後に)ちゃんとした物が出たと。

:こんなバージョンのやつは聞いたことないって言ってたけど、その位詳しいの?僕は全く分からないんだけど(笑)。

平川:そうですねえ…。ボーカルが違うんです。

:あ!そうそうそう、これね、そうなんだよ!

平川:オケは同じですよね。…この”6パック”って気になるんですけど。17曲目、何ですか?こんな曲知らない。

:それなんかね…確かラジオの!これ、面白いよ。

平川:あ、「Carl and the Passions “So Tough” 」の宣伝なんですね。

「Carl and the Passions “So Tough” 」って言うアルバムがこれ(この作品)の1個前にあったんですけど。1番マイナーな(笑)、最悪の…って最悪じゃないか(笑)。

:誰も聞いてないだろう(笑)。

平川:あれ、聞いてる人いないですよね。

:カール・ウィルソンが(1番下の)弟なんだけどね、実際に会った時に結構哲学者的な(人だった)。グループの中でも、結構力強かったんだよね。

平川:この曲はオランダのラジオの宣伝だと。ま、だから本当にビーチボーイズでニッチと言えば70年代だなあ、と言う感じですよね。

 

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平川:…もう1枚(紹介して)良いですか?

:どうぞどうぞ。

平川:最後に…これ、ご存知ですか?

:知らない…。

平川:これはですね、倉木麻衣さんって言う…(笑)。

:ああ、日本人の。

平川:このコンピ(コンピレーションアルバム)すごいんですよ。全部ビーチボーイズとかホットロッドとかの(カバー曲が入ってる)。「GIZA studio Mai.K and FRIENDS HOTROD BEACH PARTY」。これがねえ、ヤバイんですよ。まず1曲目を。…倉木麻衣さんですよ?倉木麻衣さんとか、あと…。

サカモト:愛内里菜さんとか…。

平川:ちょうど僕らが小学生の時ね。

:そういえば僕もある。女性で、ビーチボーイズのカバー集やったから持って来れば良かった。

サカモト:あれですか、渚さんがディレクターで。

:野田幹子さんって人。全編全曲ビーチボーイズのカバーで。ソニーにいた時ね。

(曲を聴きながら)

サカモト:GIZA studio。

中村:(歌詞で)ドントウォーリーって言ってますよ(笑)。「D!・O!・N!…」って!

(一同笑)

平川:”Don’t Worry Baby”でね。これですよー。

で、2曲目で愛内里菜さんが”Shut Down”をやってるんですけど。

サカモト:これはでも、どうしたんですかね(笑)?

平川:誰が何を血迷ったのか…!

:この(クレジットの)人が僕知ってるんだけど、多分(彼が)やらせたんじゃないかな…。

平川:この、アレンジ…!(ドラムのリズムを口ずさむ)これですよ?

サカモト:GIZAならではの、後ろ(リズム隊)が”外人”て言う所ですよね(笑)。やっぱGIZAすごいなあ。

平川:で、(僕は)これが出て一応買ってみるって言うね(笑)。ビーチボーイズのファンとしての、この(熱量)!一応買っておくと言う(笑)。

…あ、そうそう!さっきの”パサディナのおばあちゃん”、(この作品で)やってるんですよ。

:じゃそれ聞いてみたい!

平川:「GARNET CROW」って言うね、また、懐かしい…!

サカモト:さっきの曲(”パサディナのおばあちゃん”)がどう言うアレンジになったのか…?

(曲が流れる→一同笑)

サカモト:4つ打ちになった!

(しばし傾聴)

平川:もう…よく分かんないです!GARNET CROWなんて、懐かしいでしょ?

サカモト:懐かしいー。…ハーモニーはちゃんとした人たち…!

平川:そうなんですよね。ハーモニー結構上手いですよね。

中村:お金はすごいかかってる感じですよね。

平川:そうですね。…アンニュイな感じでね!

サカモト:でもこう言うのって、拡まる良いきっかけになるんですよね、やっぱり。

平川:これで拡まるのかなあ…!?

サカモト:(笑)いやでも、ここ(GIZA)好きがもちろん何枚か買った訳じゃないですか、絶対に。

平川:そうですね。この頃倉木麻衣さん、人気ありましたからね。

サカモト:そういう人が、『良く分かんないけどとりあえず「ビーチーボーイズ」?何?』って言う感じで。でそれが自分が小学生の時とかだったら意外とそれがきっかけ、って言う人も…。

平川:ここからビーチボーイズに入った人もいるかもしれない…!

サカモト:あり得る!

平川:あり得ますよね!

 

 

ニッチ・ポップ試聴会Vol,2の前半、平川さんと渚さんのビーチボーイズにまつわるエトセトラ、2人の話を聴いているだけで、自分の知っているビーチボーイズだけでなく、それにまつわる音楽をよりもっと聴いてみたくなりました。

後半は、ELEKIBASSと空中カメラによる、PILOTをテーマ(酒のつまみに)対談お送りします。乞うご期待!

第2回 ニッチ・ポップ試聴会 後編

第1回  ニッチ・ポップ試聴会

 

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【イベントinfo】

ビートルズ不在の70年代の「隙間」を支えたもうひとつのポップ・シーン「ニッチ・ポップ」、その「隙間(ニッチ)」をこの日本、東京で2016年に鳴らすのは一体どんな「隙間(ニッチ)」音楽!?をテーマにお送りする「ニッチ・ポップサンデー」数回のアメリカツアーを通して、USインディ経由のルーツミュージックを奏でるELEKIBASSと、シティポップといっても【市街】じゃなくて【町内】、ってか【村】音楽(シティポップ)を奏でる空中カメラ、このレギュラー2組に、60年代、70年代のアメリカ西海岸から大滝詠一や山下達郎などのシティポップに影響を受けている『The Pen Friend Club』を迎えた全3組で「隙間(ニッチ)」を六本木Varit. にて鳴らします。DJは今回も各バンドのメンバーが、それぞれのルーツを流し、解説までする、喫茶スタイルでお送りいたします。

2016.10.23.sun 六本木Varit.
“WaikikiRecord presents 「ニッチポップサンデーVol,2」”
open/start 17:30/18:00
add/day 2,500/3,000 +1drink

出演:ELEKIBASS/空中カメラ/ThePenFriendClub

DJ:JP&sakamoto(ELEKIBASS)/空中クルー(空中カメラ)/平川雄一(ThePenFriendClub)

チケット
e+ 8/8より発売開始

【メール予約】
予約はinfo@waikikirecord.comまで、お名前/枚数、公演日を明記の上メールにて承ります。
受付終了しましたら、予約完了のメールを返信させていただきます
携帯電話のメールアドレスから予約される場合、ドメイン指定受信を設定されている方は
「@waikikirecord.com」を受信できるように指定してください。
*各バンドに直接お問い合わせいただいてもご予約可能です。

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date: 2016-09-30 | Category: 対談 | No Comments »

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